(仮称)仙台高松発電所建設計画に係る環境影響評価方法書に関する奧山市長意見表明を受けて

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           (仮称)仙台高松発電所建設計画に係る環境影響評価方法書

に関する奧山市長意見表明を受けて

本日8月17日、奧山恵美子仙台市長は、四国電力・住友商事による「(仮称)仙台高松発電所建設計画」の環境影響評価方法書に対する市長意見を表明した。この意見では、8月8日に市長に提出された仙台市環境影響評価審査会(以下、審査会)の答申を踏まえつつも、「はじめに」において、奧山市長自身の問題意識と危機感が表明されている。とくに1)「(本事業への多くの反対意見の根底にあるものは)環境負荷の高い石炭火力発電所が被災地に建設されることへの憤りである。また計画地周辺には多くの住宅地や学校等が存在するところであり、排出ガスに含まれるPM2.5や水銀等による健康被害への懸念も示されている」とした点、および2)「杜の都・仙台」の良好な環境を保全し、将来へと継承していくことは、多くの市民が強く願うところであり」と表明した点、3)事業者に「燃料の産地・性状の公表」を求めた点、4)バイオマス混燃割合の確実な実行と可能な限りその割合を高めることを求めた点、5)「稼働前後の現地調査による影響の検証」を求めた点は、審査会の答申よりも一歩踏み込んだ意見表明と言える。

ただし、事業者に事業自体の再検討や見直しを求めるところまで踏み込んでいない点は遺憾である。

8月8日、田辺信宏静岡市長は定例記者会見で、旧東燃ゼネラル石油(JXTGエネルギー)が同市清水区袖師町に計画しているLNG火力発電所の建設について、「環境、景観、観光、経済、まちづくり、防災などを総合的に勘案して判断した」と述べ「計画の見直しを含め再考してもらいたい」と表明した(2017年8月9日付け朝日新聞デジタル版http://digital.asahi.com/articles/ASK884S0XK88UTPB00C.html)。市長意見表明には、本来、このような環境および被災地復興のあり方などを総合的に勘案した戦略的な政策判断が求められる。

今回の市長意見表明が、事業自体の再検討や見直しを求めるところまで踏み込んでいないのは、仙台市の現行制度が、事業実施段階後の方法書縦覧手続きから始まる旧来型の環境影響評価手続きに依拠しており(2013年4月1日から国は制度を変更している)、事業実施段階前の計画段階配慮書手続きを欠いているために、「ゼロ・オプション」を検討しがたいことに起因する制度的な限界でもある(四国電力・住友商事は、仙台市の現行条例のこのような制度的な欠陥を利用して事業を進めてきたとも言える)。

仙台市民の「環境負荷の高い石炭火力発電所が被災地に建設されることへの憤り」や「排出ガスに含まれるPM2.5や水銀等による健康被害への懸念」は十分に根拠のあるものであり、環境権や人格権にかかわる市民の基本的な権利侵害への憤りや懸念である。この点は、仙台パワーステーション株式会社の環境アセスメント逃れを許し、本事業の環境アセスメント手続きが開始された時点の政令市仙台市の市長として、重く受け止めるべきである。

今後、環境影響評価手続きは方法書の次の準備書段階に進むことになる。そこでは環境アセスメントを実施した結果が公表され、説明会の開催、意見書、公聴会の開催等を経て、再び市長意見が表明されることになる。私たちとしては、新健康都市宣言を選挙公約に掲げ当選し、8月22日に就任する郡和子新仙台市長の強力なリーダーシップに期待したい。

郡新市政のもとで、仙台市は、兵庫県、東京都、埼玉県、京都市などの先進自治体の事例を参考に、現行の環境影響評価条例を速やかに改定し、計画段階配慮書手続きを導入すべきである。

私ども「仙台港の石炭火力発電所建設問題を考える会」は、四国電力・住友商事による仙台高松発電所建設計画の下記のような多くの問題点を今後も社会的に提起し続け、批判的に監視していきたい。

四国電力・住友商事は、この市長意見に明示されたような「環境負荷の高い石炭火力発電所が被災地に建設されることへの憤り」および「計画地周辺には多くの住宅地や学校等が存在するところであり、排出ガスに含まれるPM2.5や水銀等による健康被害への懸念も示されている」というこの事業自体が本質的に有する問題点を真摯に受け止め、早急に計画自体の再検討・見直しを決断することを求める。

  1. 4月2・3日の事業者説明会での住民意見によれば、本事業には、被災地に、震災を契機として、主に首都圏に売電するための県外資本による石炭火力発電所が集中するという本件に固有の事情があり、「災害便乗型ビジネス」だという住民の反発が強い。被災し、震災後長期にわたって仮設住宅での仮住まいを余儀なくされてきた住民が、さらに操業開始後40年にわたって、大気汚染と健康被害、温暖化による天候不順、地域の環境のシンボルである蒲生干潟への悪影響などに脅かされるという何重もの理不尽さが本事業には本質的につきまとっている。
  2. 4月2日から「仙台港の石炭火力発電所建設問題を考える会(以下、考える会)」が開始した「杜の都を「石炭の都」にするな 緊急署名」には、5月30日までに2万2813筆の署名が集まり(宮城県知事に原本提出済み)、8月9日現在総計4万6720筆が集まっている。

審査会答申と市長意見表明の主な問題点

  1. (仮称)仙台高松発電所から5km圏の人口は宮城野区・多賀城市・塩竃市・七ヶ浜町を含んで約15万人であり、宮城野区の人口の約27%が5km圏に含まれる。5km圏には小学校15校を含め計32校の学校が所在し、東北医科薬科大学病院、うみの杜水族館など医療機関や集客施設も数多く所在する。3回の審査会では、このような基本的な事実が、事業者側からも、委員側からも1度も言及されていない
  2. PM2.5による健康被害に対する危機意識が乏しい。石炭火力発電所が排出されるPM2.5などの大気汚染物質は、近隣住民などに早期死亡や喘息などの健康被害をもたらす。最新の疫学的研究によると、PM2.5濃度には健康被害に関する閾値がない(年平均12μg/m3以下の低濃度でも被害がある)。一方、発電所建設予定地近隣の住宅地におけるPM2.5濃度は年平均10μg/m3程度であり、しばしば環境基準値の35μg/m3を超え、時期や大気条件によっては80μg/m3を超える場合もある。したがって、石炭火力発電所新設が健康被害をもたらすことは明白である。しかし、審査会には大気汚染物質の健康被害を専門とする委員が存在せず、答申でもほとんど触れられていない。
  3. パリ協定発効後に出された千葉県の蘇我石炭火力発電所の環境影響評価(配慮書)に対する環境大臣意見(2017年3月10日)は、2030年温室効果ガス26%削減(2013年比)、2050 年 80%減という国の目標を阻害しかねないとして、温室効果ガス排出削減の取組への対応の道筋が描けない場合には同計画の再検討を求めた。また、201781日にも、環境大臣は愛知県の武豊火力発電所の環境影響評価(準備書)に対して再検討を求める同様の意見を出している。
  4. これらの指摘は、本件計画にもあてはまる。しかし、3月21日、6月6日の委員会において温室効果ガス排出について熱心に発言されていた大熊委員(前東北大学大学院法学研究科教授)が原子力規制庁への異動にともなって7月8日付けで委員を辞任されたためか、温室効果ガス排出についての言及が乏しい。
  5. (仮称)仙台高松発電所から排出される温室効果ガス(CO2)排出量は年間47万トンと推定される。これは、仙台市の温室効果ガス排出量4万トン(2014年度)の5.6%にあたる)。一般家庭から排出されるCO2は年間3.49トン/世帯(全国平均)であることから、年間13.5万世帯分の CO2を新たに排出することになる。仙台市の世帯数は50.3万世帯であるから、1世帯当たりの CO2 排出量は実質で27%も増える。すなわち、節電・省エネなど仙台市民による温室効果ガス削減努力は実質的にほとんど意味を持たないものになり、市民や市内事業者の節電・省エネ、温暖化対策への取り組みの意欲は大幅に低下することが危惧される。
  6. 「水銀に関する水俣条約」が昨日8月16日に発効し、国内担保法が来年度から施行される。これに基づいて、水銀条約およびその国内担保法の趣旨にかんがみ、水銀の「排出量」の予測・評価・削減対策が必要となっている。しかし、方法書では大気への排出を含む水銀の直接排出量(約3割)と石炭灰などによる間接排出量(約7割)に対する予測・評価・削減対策の必要性に触れていない。
  7. 事業者に対し、本事業全般にわたって、環境保全対策に関する現状での最善の利用可能技術(BAT)の導入を求めるべきであり、各技術が現状での最善の利用可能技術であることの厳密な検証を求めるべきである。

 

仙台港の石炭火力発電所建設問題を考える会 共同代表 長谷川公一 明日香壽川

 

<関連リンク>

(仮称)仙台高松発電所建設計画に係る環境影響評価方法書に対する市長意見について

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