【申入書】住友商事は早期撤退を「実践躬行」し、 被災地住民に、平穏な暮らしの「夢」を返せ

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住友商事株式会社 社長 兵頭誠之殿

申入書
住友商事は早期撤退を「実践躬行」し、
被災地住民に、平穏な暮らしの「夢」を返せ

                              2018年4月16日

           仙台港の石炭火力発電所建設問題を考える会・共同代表
長谷川 公一
明日香 壽川

 住友商事株式会社新社長に、御社の仙台港における石炭火力発電所新設のプロジェクトについて、是非とも早期にご再考いただきたいと考え、以下の申し入れをいたします。

ご承知のように、四国電力株式会社は4月10日に記者会見を行い、「十分な事業性が見込めないとの判断に至ったこと」を理由に、御社との共同事業であった(仮称)仙台高松発電所の建設計画から撤退すると発表した。事業性が見込めない事情や条件等は、基本的には御社においても同様のはずである。御社も、四国電力株式会社の英断に学び、(仮称)仙台高松発電所を被災地・仙台港に建設することの問題点と困難さを真摯に受け止め、地域住民や仙台市民の不安や苦悩をいたずらに長引かせることなく、早期に完全撤退を表明するよう強く求め、ここに申し入れる。

四国電力株式会社が仙台高松発電所の建設から撤退を表明したことに対して、中川雅治環境相は4月13日の閣議後の記者会見で「石炭火力発電を取り巻く国内外の状況は非常に厳しい。決断を評価したい」と述べ歓迎するとともに、「四国電力、住友商事に限らず全ての発電事業者が二酸化炭素(CO2)排出量を確実に削減してほしい」と注文を付けた。

御社のウエブサイトによれば、「夢なきものに成功なし。高い目標を掲げ、信念に従って実際に踏み行う」「実践躬行」が、貴殿の新社長就任のメッセージである。

パリ協定が成立し、世界中が脱炭素化をめざしている今、石炭火力発電所建設に、はたして夢はあるだろうか。地域社会からも、環境大臣からも厳しい指弾を受け、社会的合意を得がたいこのプロジェクトに、はたして夢はあるだろうか。新社長のリーダーシップによって速やかに「実践躬行」を図り、被災地の住民を不安に陥れ、子どもたちの健康を脅かし、その夢を奪うようなプロジェクトからの撤退を表明し、被災地に復興の夢を、平穏な暮らしの夢を返していただきたい。

仙台高松発電所の建設計画は、仙台市の条例にもとづく環境影響評価の準備書段階を迎えていたが、調査項目の追加など、仙台市環境影響評価審査会で厳しい注文が相次ぎ、当初の予定から約1年進捗が遅れていた。

被災地仙台港に、震災を契機として、主に首都圏に売電するために設される2基目の石炭火力発電所である本事業には、震災後長期にわたって苦難を余儀なくされてきた近隣住民が、さらに操業開始後約40年にわたって、大気汚染による健康被害、地球温暖化による気象災害、地域の環境のシンボルである蒲生干潟への水銀などの重金属降下による悪影響などに脅かされるという何重もの理不尽さが本質的につきまとっており、「災害便乗型ビジネス」だとして住民の強い批判を受けてきた。

同発電所から5km圏の人口は、宮城野区・多賀城市・塩竃市・七ヶ浜町を含んで約15万人であり、宮城野区の人口の約27%、50,838人が5km圏に住む。5km圏には小学校15校を含め計32校の学校が所在し、東北医科薬科大学病院、うみの杜水族館など医療機関や集客施設も数多く所在する。

本事業に対する仙台市環境影響評価条例に基づく方法書への意見書の提出期間(2017年 3 月 14 日から 4 月 27 日(消印有効))までに示された意見書は235通、意見総数386であった。同市の環境アセスメントにおける意見書としても、全国的に見た場合の石炭火力発電所に対する意見書としても、異例に多く、そのほとんど全ては批判的な意見が占めた。昨年4月2日から私達が開始した「杜の都を「石炭の都」にするな!緊急署名」にも、約4万8000筆もの署名が集まった。

私たちが仙台パワーステーション株式会社を被告として昨年9月に提訴した操業差止訴訟にも、124名もの地域住民が原告に参加している。四国電力はプレスリリースで、「十分な事業性が見込めないこと」を撤退の理由としているが、こうした市民の石炭火力発電所立地への広範な反対の声の大きさこそが、今回の四国電力の撤退表明の直接的な第一の要因であることは、本事業のビジネスパートナーであった御社こそが一番よく承知しているはずである

ご承知のように、全国紙のいずれもが、また週刊東洋経済のような経済誌も、石炭火力問題を批判的な視点から報じている。とくに、地元紙河北新報紙をはじめ、全国紙の宮城県版、地元のテレビ局のニュース等で、このプロジェクトは頻繁に報道されている。早期に来仙され、地元で歓迎する声が皆無に近いことを、是非、現地周辺や蒲生干潟の周辺を歩かれ、社長ご自身の眼と耳で検証していただきたい。

CO2の排出や大気汚染の相対的に少ないLNG火力の場合にも、静岡市の清水港近くに予定されていたLNG火力発電所の建設計画の白紙撤回をJXTGエネルギーが決定したと報じられている(2018年3月25日付け日経新聞ほか)。

今回の四国電力の声明も、電力需給が緩み、LNG価格が低価格で安定する中、石炭火力発電所の建設が今や完全に公共性や経済性に乏しい迷惑施設化しており、地域の合意のない発電所の建設は計画撤回に追い込まれざるをえないことを示している。

また、こうした市民の声を背景に、仙台市環境影響評価審査会でも、追加の調査項目などについて、委員から厳しい注文が付き、昨年8月に奧山市長(当時)の意見書でも、相当厳しい意見が表明されている。

特に、郡和子新市長のもとで、昨年12月1日から即日施行された「杜の都・仙台のきれいな空気と水と緑を守るための指導方針」で、仙台市として石炭火力発電所の新設を抑制するとの批判的な姿勢が示され、「低炭素型で自然と共生する良好な都市環境を守り抜いていく」ことが宣言されていた。今回の撤退表明は、仙台市の環境影響評価の仕組みや「杜の都・仙台のきれいな空気と水と緑を守るための指導方針」が有効に機能したことを示している。

 四国電力の撤退表明は、市民の力の勝利であるとともに、郡新市長のもとでの仙台市の環境行政の具体的な最初の成果でもある、と評価されている。

この3月28日に発表された宮城県の「再生可能エネルギー・省エネルギー計画(中間案)」においても、エネルギーの「地産地消、地域主導」が強調され、施策のConcept 3として「CO₂を多く排出する石炭火力発電や、海外から輸入する バイオマス資源を燃料とする火力発電については、輸送時の温室効果ガスの排出や大気への負荷等の課題があります。」と指摘されている。

宮城県議会・仙台市議会・多賀城市議会・塩釜市議会等においても、与党系会派の議員を含め、超党派の議員が、仙台港の石炭火力発電問題について、繰り返し批判的な見解を述べている。

2015年12月のパリ協定締結後、とくにこの1年の間に、仙台市のみならず、国内外で急速に高まってきた石炭火力発電所への批判的な動き、各石炭火力発電所の環境影響評価における環境大臣の度重なる批判的な意見表明、世論、メディア報道を、御社も真摯に受け止めるべきである。

石炭火力発電所の新設はパリ協定に矛盾し、気候変動対策に逆行する。最新型の天然ガス火力に比べ、石炭火力発電所は、二酸化炭素の排出量が倍以上多い。日本全国に46基ある石炭火力の新設計画が全て実現すると、2030年度に、13年度比で26%削減という、パリ協定で約束した日本の削減目標の達成が危うくなることから、環境省も強い危機感を持っている。

そして、昨年9月提訴した仙台パワーステーション操業差止訴訟を皮切りに、12月には神戸製鋼の石炭火力計画に対する公害調停が始まるなど、司法に救済を求める動きが日本の他の地域にも拡がりつつある。

仙台高松発電所の事業継続は、こうした仙台市・宮城県・国内外で急速に拡がってきた石炭火力に反対する世論、地域および国の施策に対する重大な挑戦である。

私どもは、各地で石炭火力計画に反対する国内の市民グループ、環境NGO、国際的な環境団体と協力し、本プロジェクトが「災害便乗型ビジネス」であることを、国内外に厳しく訴えてまいります。メディアやSNS、株主総会はじめ、あらゆる機会を活用し、住友グループ各社に対しても、本プロジェクトの問題性を提起してまいります。海外の環境NGOと協力してSUMITOMOブランドの各種商品・プロジェクトに対する国際的なボイコット運動を展開することも計画しております。

今回の四国電力の決断を踏まえて、御社が本事業からの撤退を早期に決断されることをあらためて強く求めます。

返信先 980−8576 仙台市青葉区川内41番地 東北大学東北アジア研究センター
明日香壽川研究室気付 仙台港の石炭火力発電所建設問題を考える会事務局

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