【声明】市民の声が住友商事(株)に石炭火力を断念させた

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声明:市民の声が住友商事(株)に石炭火力を断念させた

                              2018年6月4日

           仙台港の石炭火力発電所建設問題を考える会・共同代表
長谷川 公一
明日香 壽川

石炭火力7基目の撤退

住友商事株式会社は、6月1日(仮称)仙台高松発電所での石炭の燃焼(木質バイオ30%との混焼)を断念し、100%木質バイオマスプラントに計画を変更して事業性を検討していくことを表明した。2012年以降、日本全国に50基の石炭火力の新設計画があったが、既に6基(市原、赤穂2基、大船渡、高砂2基)が撤退に追い込まれ、仙台高松発電所は石炭火力としては7基目の撤退となった。事業のパートナーだった四国電力は4月10日に撤退を表明していた。今回の住友商事の計画変更によって、石炭火力からの撤退がさらに加速される可能性がある。

100%木質バイオマスプラントであっても、被災地仙台港での火力発電事業には、後述するような幾つかの問題がある。同社には完全撤退の早期英断を強く求めたい。

仙台高松発電所は、仙台市の条例にもとづく環境影響評価の準備書段階に進んでいたが、調査項目の追加など、仙台市環境影響評価審査会で厳しい注文が相次いだことなどから、事業化するかどうかの決断が大幅に遅れていた。2021年度の操業開始を予定していたが、今回住友商事は2年後の20234月の操業開始を予定するとした。

 

石炭火力発電計画の問題点

同発電所は、被災地仙台港に、震災を契機として、主に首都圏に売電するために県外資本によって建設される2基目の石炭火力発電所だった。震災後長期にわたって苦難を余儀なくされてきた近隣住民が、さらに操業開始後40年にわたって、大気汚染と健康被害、温暖化による影響、地域の環境のシンボルである蒲生干潟への悪影響などに脅かされるという何重もの理不尽さが本事業には本質的につきまとっていたことから、「災害便乗型ビジネス」だとして住民の強い批判を受けてきた。

(仮称)仙台高松発電所から5km圏の人口は宮城野区・多賀城市・塩竃市・七ヶ浜町を含んで約15万人であり、5km圏には小学校15校を含め計32校の学校が所在し、東北医科薬科大学病院、うみの杜水族館など医療機関や集客施設も数多く所在する。

本事業に対する仙台市環境影響評価条例に基づく方法書への意見書の提出期間(2017年3 月14 日から4 月27 日(消印有効))までに示された意見書は235通、意見総数386だった。火力発電所に対する意見書としては異例に多く、そのほとんど全ては批判的な意見だった。昨年4月2日から私達が開始した「杜の都を「石炭の都」にするな! 緊急署名」にも、約4万8000筆もの署名が集まった。

私達が仙台PSに対して提起した操業差止訴訟にも、予想を大きく上回る原告124名が参加している。こうした石炭火力発電所計画への広範な市民の反対の声こそが、今回の石炭混焼から100%木質バイオマスへの計画変更の直接的な第一の要因だろう

実際、仙台PSの稼働後、臭いがする、窓を開閉するにも風向きを考慮しながら開け閉めせざるを得なくなった。洗濯物を干すときも、外にするか中に干すか、考え込まざるをえなくなったなどの苦情が地域住民の方々から多数寄せられている。

CO2の排出や大気汚染の相対的に少ないLNG火力の場合にも、静岡市の清水港近くに予定されていたLNG火力発電所の建設計画の白紙撤回を本年3月JXTGエネルギーが決定したと報じられている。

今回の住友商事の発表も、石炭火力発電所の建設が今や迷惑施設化しており、地域住民の合意のない発電所の建設は計画撤回に追い込まれざるをえないことを端的に示している。

 

第二に、こうした市民の声を背景に、仙台市環境影響評価審査会でも、追加の調査項目などについて、委員から厳しい注文が付き、昨年8月に奧山市長(当時)の意見書でも、厳しい意見が表明されていた。とくに郡新市長のもとで、昨年12月1日から即日施行された「杜の都・仙台のきれいな空気と水と緑を守るための指導方針」で、石炭火力発電所に対する仙台市の批判的な姿勢が示され、「低炭素型で自然と共生する良好な都市環境を守り抜いていく」ことが宣言されていた。

今回の撤退表明は、仙台市の環境影響評価の仕組みや「杜の都・仙台のきれいな空気と水と緑を守るための指導方針」が有効に機能したことを示している。

住友商事が計画変更を余儀なくされたことは、市民の力の勝利であるとともに、郡市長のもとでの仙台市の環境行政の具体的な成果とも言える。

 

第三に、2015年12月のパリ協定締結後、とくにこの2年半の間に、仙台市のみならず、国内外で急速に高まってきた石炭火力発電所への批判的な動き、各石炭火力発電所の環境影響評価における環境大臣の度重なる批判的な意見表明、世論、メディア報道の影響を指摘できる。

石炭火力発電所の新設はパリ協定に矛盾し、気候変動対策に逆行する。最新型の天然ガス火力に比べ、石炭火力発電所は、二酸化炭素の排出量が倍以上多い。日本全国にある石炭火力の新設計画が全て実現すると、2030年度13年度比26%削減という、パリ協定で約束した日本の削減目標の達成が危うくなることから、環境省も強い危機感を持っていた。

昨年9月の仙台PSへの操業差止訴訟を皮切りに、12月には神戸製鋼の石炭火力計画に対する公害調停が始まるなど、法的救済を求める動きも広がりつつあった。

 

100%木質バイオマス発電所計画の主な問題点

しかし100%木質バイオマス発電所であっても、本事業には多くの問題がある。私どもとしては、6月22日に開催される同社の株主総会において、また環境影響評価書準備書に関する住民説明会の折などを通じて、以下の諸点を厳しく批判するとともに、本事業の完全撤退を求めていきたい。

 

1.カーボン・ニュートラルについて

住友商事は、燃料の木質バイオマスは価格や供給の安定性の点から、北米の木質ペレットを中心に予定しているとする。木質バイオマスは計算上、二酸化炭素の排出量と吸収量が等しいものとして扱われる(カーボン・ニュートラル)。しかし、輸入バイオマスの場合には輸送のためのエネルギーが必要なのでゼロ・エミッションではない。また、海外において持続的な森林伐採のもとで製造された木質ペレットであるかの確証も必要である。

カーボン・ニュートラルは計算上のものであり、樹木による炭素固定には数十年を要する。人為的に大量に伐採し、エネルギー効率の低い発電事業のために燃焼させることは、地球環境にとっては新たな炭素負荷となる。

国内においても、国外においても、木質バイオマスのために森林破壊をし、生態系を破壊することは許されない。

 

2.事業性への疑問

事業性は今後検討するとしているが、四国電力の撤退の理由は、同社が「十分な事業性が見込めない」との判断に至ったことだった。石炭火力に比べて、木質バイオマスは燃料費が高い。木質バイオマス100%に転換することで、固定価格買取制度を利用し、発電量すべてを東北電力に相対的に高値で販売する狙いとのことだが、十分な事業性が得られない公算が高い。

いたずらに事業性の検討を長引かせることなく、完全撤退の早期決断こそが、経済的にももっとも合理的な選択であることを住友商事は認識すべきである。

事業性が得られない場合、将来的に、石炭混焼への転換の可能性も皆無ではない。仮に木質バイオマス100%で事業化を進める場合には、仙台市との間で、将来も、石炭混焼への転換はしないことの確約が必要である。

 

3.環境汚染の懸念

100%木質バイオマスであっても、NOxやPM2.5などの大気汚染物質の排出が懸念される。発電所建設予定地近隣の住宅地におけるPM2.5濃度は年平均10μg/m3程度であり、しばしば環境基準値の35μg/m3を超え、時期や大気条件によっては80μg/m3を超える場合もある。

温排水の仙台港と周辺の海域や蒲生干潟への影響も懸念される。

被災地に営利追求のためにバイオマス発電所を建設する事は、地域住民としては、到底納得しがたい。

 

4.木質バイオマス利用のあるべき姿

再エネ循環としての木質バイオナス利用は、本来は、間伐材や廃材などの利活用策として、地域の林業との共生の中で行われるべきものである。

「宮城県地球温暖化対策実行計画(区域施策編)(中間案)」の「第9章目標達成に向けた施策」においても、Concept 3として「CO₂を多く排出する石炭火力発電や、海外から輸入するバイオマス資源を燃料とする火力発電については、輸送時の効果ガスの排出や大気への負荷等の課題があります。今後、県施策におけるエネルギー・資源の利活用に当たっては、県産未利用材の有効活用を前提とした木質バイオマスなど、CO₂の削減はもとより、エネルギー利用に伴う便益・利益が地域経済の循環・還元に資する取組を推進することとし、“地産地消”、“地域主導”に徹底的にこだわります」と謳われている(https://www.pref.miyagi.jp/uploaded/attachment/667383.pdf)。

住友商事の輸入木質バイオマス100%の発電所計画案は、地産地消でも、地域主導でもない。固定価格買取制度を利用した、外部資本による営利主導の事業である

 

仙台市および仙台市環境影響評価審査会の今後の役割の重要性

前述のように、四国電力の撤退に続く、住友商事の方針転換は、仙台市の新指導方針および仙台市環境影響評価審査会の環境影響評価手続きの成果でもある。仙台市と仙台市環境影響評価審査会は、今後も、100%木質バイオマス発電所の環境への影響について、杜の都と被災地周辺の住民の健康と環境を守る視点を第一に、厳格な審査を継続してほしい。

 

仙台の一歩を他地域にも

最後に、今回の住友商事の決定が、日本における他地域の石炭火力発電所の建設計画に対しても、仙台港におけるレノバ社による木質バイオマス火力発電所の建設計画、昨年10月から稼働中の仙台パワーステーションに対する行政の指導、訴訟の動向にも大きな影響を与えることを期待する。

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